経営者団体の広報誌に作家の高田郁(かおる)氏の「あきない世傳」の書評が書いてあり、面白そうなので読んでみることにした。

この本は摂津国武庫郡津門村(現在の西宮市今津)で私塾を開いている学者の父と女に学問は不要と考えている働き者の母の間に生まれた幸が、優しい兄と厳格な父が相次いで亡くなり、わずか9歳で大坂天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に行くことから物語は始まる。

幸は幼いころから学問が大好きだったが、女衆(おなごし)は奥の仕事だけで店に出ることは許されず、商いの勉強をする機会もない。しかし番頭の治兵衛が幸の学問好きと商いの才能に気づき、治兵衛の計らいにより、幸は14歳で4代目店主の後添えとなる。その後さまざまな艱難辛苦を乗り越えて江戸に進出し、大坂と違って「女名前禁止」のない江戸で五鈴屋江戸店主となって、周りの人々の協力や持ち前の知恵でさまざまな危機や困難を乗り越えて、百年以上続く大店に発展させていく物語である。

この物語、「源流篇」の第1巻から「大海篇」の13巻まであり、今月初めから読み始め、他の本も入り混じって読むので、まだ6巻までしか読めていない。しかし以前に読んだ同じ著者の「銀二貫」もそうだったが、江戸時代の士農工商という身分制度の中で、商人としての矜持を守り律儀と誠実を旨として信用一筋で必死に働く人々の懸命さに胸を打たれる。
実は著者の高田郁氏とは宝塚第一小学校、県立宝塚高校の同級生である。ただ同じクラスにはなったことはなく、同級生に聞いてみてもほとんど記憶がないということで目立たない生徒だったみたいだ。何年か前に出た「みをつくし料理帖」は映画にもなり、「あきない世傳」もこの春にドラマ化されるという。
どのような世の中であれ、自分の使命を自覚し、志を立てて周りの人たちの幸せを願って懸命に働く人々は感動と共感を生む。物語には石田梅岩の都鄙問答や近江商人の三方よしの哲学が登場し、大坂商人の心意気があちこちに感じられる。事業を営む者として絶対に忘れてはならない哲学が凝縮された物語である。














